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2023年12月14日

樋口満先生 講演
『動楽と食楽で健康長寿』

樋口満先生による『動楽と食楽で健康長寿』の講演内容をご紹介いたします。

1. WASEDA’S Health Studyの研究で最近分かってきたこと

WASEDA’S Health Studyの研究では、『老化のスピード』を”遅らせる”要因が分かってきたといいます。

▼生物学的年齢を遅らせる(老化を遅らせる)要因

  • 高い心肺機能
  • ビタミンCをたくさん摂っている
  • 適切な身体組成・朝型の生活習慣

一方で、老化を”早める”要因もわかってきました。

▼生物学的年齢を進める(老化を早める)要因

  • 過度の飲酒
  • 過度の喫煙
  • 過度の内臓脂肪の蓄積

不摂生な生活を過ごすよりも、適切な生活習慣の中で適切に食べよく動く事が大事、という事がよく分かります。

2. 近年の体力

20年前と比べると、30代と40代の体力に変化はないですが、60代後半から70代の方の体力は上がってきています。

各年代によって健康課題は異なっています。中年はメタボ予防で、高齢者は介護予防と、年代の変化によって課題も変わるのですが、どの年代も通じて『活動的に過ごすこと』が大事であることがよく分かります。

3. 体力の維持・増進の為にどのような運動が効果的か

ここまでで分かるように、『老化を遅らせる』には『活動的に過ごすこと』が大事とわかりますが、どのような運動を行えばいいのか?ということになります。

樋口先生は『大筋群を使い持続的でリズミカルな運動であればなんでもいい』とのことですが、特に“心肺持久力”と”筋力・筋持久力”が重要と説きます。

4. 筋肉の重要性

筋肉の中でも、特に重要な箇所は、歩行や直立姿勢を保ったり足を前に出すといった動作に関わっている大腰筋が重要です。

今まで筋肉は「脳の指令を受けて動く運動器」と考えられてきていましたが、最近では『臓器』とも言われています。
(マイオカインという生理活性物質が分泌し、筋肉自身が脳、肝臓、脂肪組織、消化器に情報を送っているのですが、マイカイオンは運動(筋収縮)により分泌されると言われています。)

5. 運動による体への効果

運動による体への効果を調査すると、以下のようなことが分かりました。

  • 糖尿病患者が1年の有酸素運動を中心としたトレーニングを行う事で、血糖コントロールができ改善している。
  • 糖尿病や脂質異常は、遺伝子の中にあるリスク保有数が多いと発症する確率が高くなるが、心肺持久力が高めている人は発症のリスクを下げることができる。
  • 水泳は、心肺持久力と大腿骨頚部の骨密度が上がった。
  • ハイインパクトスポーツ(飛んだり跳ねたりなど重力負荷がかかる運動)は骨密度維持に効果があった。

6. 樋口先生おすすめの運動は『ローイング』

樋口先生おすすめの運動は、現在WelistTVでも紹介されてるボート漕ぎ運動(ローイング)です。
座って出来るので膝に優しく取り入れやすい全身運動で、チューブを使用する事で誰もが簡単に実施できるのでおすすめです。

7. 運動に加えて食を工夫することでさらに効果が上がる

また、「食べる事」でも、以下のようなことが分かりました。

  • 1日にコーヒーを2、3杯以上飲み、余暇活動の多い人はサルコペニア(筋肉量の減少で体が病気ととらえしまう状態)になりにくい。
  • 週3回程度のウォーキングに大豆イソフラボンを併用すると、1年で骨密度が5%程度上がった。

樋口満先生は「健康長寿には『動楽(楽しくからだを動かす)』と『食楽(楽しく食べる)』が重要」とまとめました。

樋口 満 先生

1949年生まれ。
早稲田大学スポーツ科学学術院名誉教授。
アクティヴ・エイジング研究所顧問。教育学博士。
名古屋大学理学部化学科卒業。
東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。
専攻は健康スポーツ科学、スポーツ栄養学。
ハンガリー体育大学名誉博士。
日本スポーツ栄養学会・日本体育学会名誉会員。
第二〇回秩父宮記念スポーツ医・科学賞功労賞受賞。

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